ブロック塀は至る所にあります。
住宅街ではおなじみとなっている※ブロック塀。誰もが一度は目にしたことがあるはずです。
(タイトルがおかしい?)
※ 組石造という 石やレンガ、ブロックなどの石造等を積み上げて造る構造物で、一般的にブロック塀とはコンクリートブロックを鉄筋とコンクリートで補強して造る塀のこと。
先日、古いブロック塀の事についての相談があったのですが、仕様の詳細等に関して案外と正確性を欠き、ぼんやりとした応答になってしまったことがありました。 実際の所、構造計算を行った事のある構造設計者ってあまりいないのではないでしょうか。ちなみに私は実際の計算を行ったことがありません。検討内容のイメージは何となくうかぶのですが、実際手を動かしていないので細かな内容までは分かりませんでした。学会基準にはブロック塀の事についても細かく整理されていますので、当然すぐに調べて相談主に資料送付しました。様々な物件をこなしてきた諸先輩方からすると、経験不足の烙印を押されそうですが。。。
しかし、かなりの数のブロック塀が存在しているのも事実なので、その全てが構造計算されているとしたら、構造設計者は寝る暇がない?かもしれません。では、どの様な流れでブロック塀は作られているのでしょうか。
そのほとんどが仕様規定に則って作られていると推測されます。
仕様規定(マニュアル)に則って作られるということは、計算自体は行わずに作られていると言うことになります。
しかし、仕様規定自体は諸先輩方の知恵や経験、それを裏付ける検討及び証明などによって出来上がっているため、下手な計算を行うより十分な説得力がある手法だと思います。全てとはいえないのですが、実際被害が発生しているものの多くは、この規定のうち何かが不足していた場合におこっていると考えられます。
今回調べ直した物はその仕様規定が中心で、高さは何メートルまでだったか?とか、そういった数値の確認となります。おそらく設計例を基にした構造計算を必要とするブロック塀は今後現れることはないだろうと思うので、設計例自体は概要を見る程度としました。 (現時点では内容把握よりも、存在認識程度。必要になればその段階で紐解くつもり。)
では、その仕様規定とはどのような物でしょうか。
建築基準法施行令第62条の8
補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ1.2m以下の塀にあっては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。
ただし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
- 高さは、2.2m以下とすること。
- 壁の厚さは、15㎝(高さ2m以下の塀にあっては、10㎝)以上とすること。
- 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及隅角部には縦に、それぞれ径9㎜以上の鉄筋を配置すること。
- 壁内には、径9㎜以上の鉄筋を縦横に80㎝以下の間隔で配置すること。
- 長さ3.4m以下ごとに、径9㎜以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの1/5以上突出したものを設けること。
- 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあっては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあってはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合にあっては、縦筋の末端は基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
- 基礎の丈は、35㎝以上とし、根入れの深さは30㎝以上とすること。
規定の内容は、高さ、厚さ、鉄筋の径、鉄筋の配筋方法、控え壁の仕様、基礎の深さです。この仕様規定に則って設置する分には計算の必要性がない(計算を行わなくても一定程度の安全性があると考えられる)ため、外構を行っている業者であれば、この仕様規定は一般的な内容なんだろうと思います。問題となるのは、この仕様規定を危険側に外れた塀を作りたい!となった場合、ただし書きの構造計算が必要になります。
仮にこの仕様規定を超える塀を作りたいとの要望があった場合は、組石造であるブロックを用いるのではなく鉄筋コンクリートの塀を勧めると思いますけど。
例えば高さです。2.2m以上って結構高いと思いません?
厚さにしても、法律で15センチといっているものを無理に薄くします?
わざわざ細い鉄筋使います?
などなど、どうせ造るのであれば仕様規定を守って安全(設計者的には安心?)な塀を作りたくありません?
ということで、通常であれば仕様規定の範疇で構築することがほとんどだと思うので、今後も構造計算が必要なブロック塀の検討依頼は来ないような気がしますし、来た場合は仕様規定で納まらないか、コンクリートの塀にしても良いかなど、別のルートを探るような気がします。