社長のつぶやき

北海道の積雪荷重

雪の重さは結構重い

今年の冬の札幌近郊における積雪量はかなり多く、仮設足場の倒壊から庇崩落、聞いた話では倉庫倒壊なんてことも起こりました。ミシミシいっていたそうです。

と、夏真っ盛り?な8月にこんなことを書いていたりしますが。。。。

なぜ倒壊したのかと聞かれても、想定した積雪荷重を超えた重さになっていた。程度しか答えようがありません。
(だいたいがトラス系なので、それ以外にも色々考えられそうですがこれは別の機会に)


では、想定した積雪荷重とは一体なんでしょうとなります。

雪の重さ的には、おおよそスコップ一杯で2kg程度はあると思います。結構重いです。除雪ではそれを50回くらいは除く訳なので。。。

実際の建築構造で雪の重さはどの様に考慮している?

建築物の計算にスコップ一杯ではバラツキが大きく一定の評価となりません。
実際は建築基準法で、計算方法、積雪量、単位荷重がそれぞれ設定されており、積雪量×単位荷重で重さを、計算方法でその重さの組み合わせ方が決められています。北海道内では基本的な考え方は変わっていないものの、条例で一部変更されている箇所があります。

建築基準法施行令第82条より
力の種類 荷重及び外力について想定する状態 一般の場合 第86条第2項ただし書の規定により特定行政庁が指定する多雪区域における場合 備考 
長期に生ずる力 常時 G + P G + P  
積雪時 G + P + 0.7S
短期に生ずる力 積雪時 G + P + S G + P + S  
暴風時乗率 G + P + W G + P + W 建築物の転倒、柱の引抜き等を検討する場合においては、Pについては、建築物の実況に応じて積載荷重を減らした数値によるものとする。
G + P + 0.35S + W
地震時 G + P + K G + P + 0.35S + K  
この表において、G、P、S、W及びKは、それぞれ次の力(軸方向力、曲げモーメント、せん断力等をいう。)を表すものとする。 
G 第84条に規定する固定荷重によって生ずる力 
P 第85条に規定する積載荷重によって生ずる力 
S 第86条に規定する積雪荷重によって生ずる力 
W 第87条に規定する風圧力によって生ずる力 
K 第88条に規定する地震力によって生ずる力 

基準法では上記のように「計算方法」示されています。一方で、道条例では

(多雪区域外の区域の建築物等における応力度)

第21条 多雪区域外の区域の建築物につき令第82条第2号に規定する長期及び短期の各応力度を計算するときは、同号の規定にかかわらず、次の表に掲げる式によらなければならない。

力の種類 荷重及び外力について想定する状態 計算式 備考
長期に生ずる力 常時 G+P   
積雪時 G+P+S   
短期に生ずる力 積雪時 G+P+S   
暴風時 G+P+W 建築物の転倒、柱の引抜き等を検討する場合においては、Pについては、建築物の実況に応じて積載荷重を減らした数値によるものとする。
G+P+0.5S+W
地震時 G+P+0.5S+K   
この表において、G、P、S、W及びKは、それぞれ次の力(軸方向力、曲げモーメント、せん断力等をいう。)を表すものとする。
G 令第84条に規定する固定荷重によって生ずる力
P 令第85条に規定する積載荷重によって生ずる力
S 令第86条に規定する積雪荷重によって生ずる力(短期に生ずる力の積雪時の状態以外の長期及び短期の各応力度を計算する場合は、知事が定める方法により計算した積雪荷重によって生ずる力)
W 令第87条に規定する風圧力によって生ずる力
K 令第88条に規定する地震力によって生ずる力

と計算方法の一部変更が示されています。紛らわしいのは、「多雪区域外の区域の建築物等における応力度」と規定しているところ。(一般の場合とすると基準法とバッティングするためこのような呼び方をしている?かどうかは不明。法律用語はメンドクサイ)

なので、積雪荷重の計算方法については以下のようになり、道条例で指定のない多雪区域については、基準法準用となっています。

多雪区域以外多雪区域
基準法一般の場合の計算方法多雪区域の計算方法
道条例道条例で指定した計算方法計算方法の指定なし

実際に多雪区域とは?

では、多雪区域はどの様に決めているのでしょうか。

一般的には多雪区域については建築基準法の告示H12年1455号で規定されていています。細かくはあるのですが、ザックリいうと垂直積雪量が1.0m未満か以上かで判断しています。(一般的には1.0m以上が多雪区域)

北海道では道条例の施行細則第17条で、積雪深度に関係なく多雪区域が指定されています。多雪区域とされなかった区域は多雪区域以外の区域となります。(ちなみに、1m以上の区域は「多雪区域」であり、1m未満の区域はもれなく「多雪区域以外の区域」となっています。)

また、第17条では積雪深さも全ての区域毎に○○㎝と決まっています。
告示から算出するより圧倒的に間違いが起こりにくいです。

北海道のHPで特定行政庁の分も含め道内の垂直積雪量が確認できます。

参考までに、東京都の多くは30~40㎝であるのに対し、ニセコでは230㎝、そばで有名な幌加内町では250㎝にもなります。
ニセコのスキー場など4mはつもっていると思うので、実際はもっと雪は多いと思いますが、建物計算としてはこの程度が妥当だということなんでしょう。

雪の単位荷重って?

ここまで、区域や積雪深度、計算方法などを見てきましたが、ここまでの内容では肝心の重さが分かりません。
建築基準法施行令第86条では「積雪量1㎝ごとに20N/㎡以上としなければならない。」ただし、それぞれの区域に応じて決めて良いとされているため、特記無き限り20N/㎡/㎝となります。(2kg/㎡/㎝)
一方、道条例の施行細則第17条で「多雪区域では30N/㎡/㎝とする」となっています。多雪区域以外の区域は条例で特に規定されていません。規定されていないと言うことは法律に則って20N/㎡/㎝で検討すれば良いということになります。

結論

以上の内容を整理すると、北海道内の建築物を検討するにあたっては以下の検討が必要になってきます。

積雪深度
(cm)
区域計算方法比重
(N/㎡/㎝)
90以下多雪区域以外道条例で指定した計算方法20
100以上多雪区域計算方法の指定なし=
基準法の多雪区域の計算方法
30

(道条例では90㎝の次は100㎝)

例えば、

区域積雪深度
(㎝)
比重
(N/㎡/㎝)
計算方法
(長期の場合)
雪の重さ
(N/㎡)
札幌市
(一部)
140(市条例)
(190)
30(市条例)G+P+0.7S(法令)140×30×0.7=2940
ニセコ町230(道条例)30(道条例)G+P+0.7S(法令)230×30×0.7=4830
恵庭市90(道条例)20(法令)G+P+S(道条例)90×20×1.0=1800
千歳市80(道条例)20(法令)G+P+S(道条例)80×20×1.0=1600

特定行政庁は独自の条例があり、札幌市に関しては札幌市建築基準法施行細則第21条で積雪深度や比重などを設定しています。

つまり、(あくまで個人的な解釈ですが。)
北海道において基準法上のいわゆる一般の場合といった区域は存在せず、全て多雪区域となる。ただし、多雪区域以外の区域を設定し、その検討内容は条例で決めます。
です。

非常に大きな注意点としては、実際の検討を行うときの基準法と条例の取り扱いについてです。現在の一貫計算プログラム(各社共通だと思います)で積雪コマンドを使用する場合、一般区域を選択してはいけません。なぜなら、一般で計算すると、基準法に準じたいわゆる一般の区域の計算となり、条例で指定している多雪区域以外の区域の計算方法を行いません。したがって、北海道内全域で建築物の計算を行う場合、区域は多雪区域としながらも比重や積雪の低減係数などのパラメータを調整して計算する必要があります。

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